【2020年民法改正によって明確化】賃貸オーナーが知っておきたい原状回復の範囲

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【2020年民法改正によって明確化】賃貸オーナーが知っておきたい原状回復の範囲

2020年4月1日に施行された改正民法は、さまざまな法律が変更になったり、新設されたりしたことで注目を集めました。
改正された法律のひとつに、「賃借人の原状回復義務」があります。
賃貸マンションやアパートのオーナー、またテナントを貸し出している方にとって、賃借人がどれくらいの範囲で原状回復義務を負うかは気になるところです。
今回は、賃貸オーナーが知っておきたい賃借人の原状回復義務の範囲について確認していきたいと思います。

■改正民法で定められた賃借人(借主)の原状回復義務とは?
改正民法621条では、賃借人の原状回復義務を次の範囲で定めています。
(賃借人の原状回復義務)
第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
引用元:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

条文を確認すると、民法で定められている原状回復義務とは、貸した当時のまま状態で賃貸人(オーナー)に返還する義務では無いということです。
賃借人の原状回復の義務は、以下3つの点は義務ではありません。
① 通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗
② 経年劣化による賃借物の変化
③ 損耗の理由が賃借人の責めに帰することができないとき

①通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗
賃借人の原状回復義務に当たらないこととして、日常生活を送ったり、お店を経営していったりすることで生じた損失が挙げられます。
使用目的の範囲を超えたとみなされる損失分についてのみ原状回復義務をする必要があると考えられています。具体的にいうと、賃借人の故意・過失によって生じた傷や民法で定められている善管注意義務に反している場合等をいいます。
通常の損耗かどうかは貸し出した期間やどのような用途で貸し出されているか等契約によって異なりますが、通常生活を送る中で不注意により小さな傷をつけてしまった等の場合は、通常の損耗として、原状回復義務の範囲に入らない可能性が高いです。

②経年劣化による賃借物の変化
賃借人の原状回復義務に該当しない事柄として、「経年劣化による賃借物の変化」が考えられます。
経年劣化の例として、壁紙の日焼けや長年家具や電化製品を置いたことによって生じた床のへこみ、壁の黒ずみ等が考えられます。
これらが原因の場合、「月日が経つにつれ当然起こりえる変化」とみなされる可能性が高く、賃借人の原状回復義務の範囲外であるとされています。

③損耗の理由が賃借人の責めに帰することができないとき
物件の損耗した理由が賃借人自身に原因がない場合、その傷は原状回復義務の範囲にはあたりません。
賃借人自身に原因がないケースとして挙げられるのが、大地震等の災害によって賃貸物件に損耗が生じた場合が考えられます。

■賃貸契約を結ぶ際に気を付けるべき条項とは?
賃借人の原状回復義務は民法では任意規定と解釈されています。つまり、通常損耗を「原状回復義務の特約」に賃貸契約に盛り込んでおけば、通常損耗等で生じた損耗分も賃借人の原状回復義務にすることができます。
しかしながら、賃借人に対し明らかに責任が加重されている契約や原状回復義務の範囲が明確に示されていない場合、せっかく特約を盛り込んでも、無効となる可能性があります。
「原状回復義務の特約」を盛り込む場合、どのような点を踏まえる必要があるのか具体的に確認していきましょう。

●原状回復義務の範囲を具体的に明記する
通常損耗等を原状回復義務に盛り込みたい場合、賃借人が負担する範囲について具体的に明記することです。
例えば、「通常損耗によって生じた畳の張替代は賃借人の負担とする」や「通常損耗でクロスの張替が生じた場合、賃借人はクロス代の〇割を負担する」といった内容が考えられます。
具体的に原状回復義務の範囲を指定せず、「賃借人が負う原状回復義務には通常損耗で生じた分も含む」といった内容ですと、賃借人の責任が加重とみなされ、契約の一部、または全部が無効になってしまう可能性があります。

●原状回復義務を盛り込みたいときには、賃借人に理由を説明したうえで合意を得る
通常損耗や経年劣化による賃貸物件の価値の減少分は、通常賃料に含まれており、それを別途退去時に請求することは、賃借人に特別な負担をかけていると解釈されています。
そのため、通常損耗を含む原状回復義務を賃借人に負わせたい場合には、賃貸人がその義務の範囲について説明し、賃借人が理解したたうえで、契約を結ぶことが大切です。

原状回復義務の争いは、よくある賃貸トラブルのひとつです。このトラブルを回避するためには、賃貸時の契約内容が重要です。
司法書士法人アンジュは、賃貸トラブル等の問題についてご相談を受け付けております。まずはお気軽にお問い合わせください。

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